短歌厚木水甕 澪の会

神奈川県厚木市の短歌会「澪の会」のブログです

*各評は講師の砂田や会の皆様から出た意見をブログ管理人(畠山)が独自にまとめたものです。各歌の著作権は各作者にあり、ブログ内で例として挙げた歌で著者名を記していないものの著作権は私(畠山)にありますので、そのまま真似してどこかに投稿したりは絶対にしないでくださいね。尚、「こう直したらどうでしょう・こんな感じに歌ってみたらどうでしょう」として書いている歌はその歌の原作者様(各歌の()内の名前の方)に著作権があるものとします。

◆視点

「◆どんな感じでやってるの?」の項でも述べましたが、まず題材、歌にする場面をなるべくスッパリと視点を動かさずに絞り、切り取りましょう。

時間の経過が入るとどうしても視点が動いてしまうので、最初のうちはとにかく意識して「瞬間」を切り取ることを心がけましょう。

 

上(かみ)の句(五七五)で山の様子について歌っていたと思ったら下(しも)の句(七七)で足元の草花に視点が移っている、などよくある例です。

作者としてはずっと山の方を向いていて、多分一歩も動かずに(笑)ある一瞬の景色を切り取ったつもりなのでしょうが、実は山から足元の草花へと視点は動いているのです。視点が動いたことが分かる描写や言葉があればよいのですが、それがない、または作者自身が視点の移動に気付いていない場合、読者からするといきなりカメラが移動して「あれ?山の様子を思い描いていたのに違うの?」となるわけです。

視点は動いていないかな、動いていたら分かるようになっているかな、と読み直し、確認してみて下さい。

 

特に「〇〇を見ていたらこれこれこうで感動した」というような内容を歌にする時は危険です。「~~したら」の時点で時間の経過が入っていたり、「~~たら」「~~れば」の前後で視点どころか主体が変わっていたりするからです。

例えば「夕方の空を眺めていたら白鷺が優雅に飛んでいった」というような場合です。「~~たら」より前は作者、後は白鷺が主体ですね。この場合、言いたいこと(歌の核)は「夕方、白鷺が優雅に飛んでいった」ですから、「空を眺めていたら」という情報は思い切って捨てて、最初から最後まで白鷺を主役としてしまいましょう。その分「大きく翼を広げ」とか「ゆっくり羽ばたき」とか「夕焼け色に染まり」など、飛んでいる白鷺の具体的な情報を入れましょう。「白鷺が優雅に飛んでいる」まさにその時その場面に視点を置いたまま語れる具体的な情報を探しましょう。白鷺のどのような様子が「優雅」だと感じたのですか?

 

また「~~て」「~~して」という流れも気を付けてください。

「一羽だった白鷺に番(つがい)っぽいもう一羽が寄って来て仲良く飛んでいった」などという場合です。

もう!!言いたいことが!!多い!!!めっちゃ時間経ってる!!

動画ですよこれは。初心者が扱える(三十一音にまとめられる)情報量じゃありません。

無理矢理一首にすれば「水際にぽつんと立ちたる白鷺に番寄り来て共に飛びゆく」とかになるでしょうが、「なんか忙しいな。」という感想になりませんか(笑)。情景にしんみり共感できる状態じゃありません。

絵葉書に描くとしたら一枚では収まりませんよね。絵にするとしたら「白鷺が二羽寄り添っているところ」か「並んで飛んでゆくところ」あたりが「絵になるぅ」という場面ではないでしょうか。

一首に全て盛り込もうとせず、「ぽつんと一羽だった白鷺のところに番の鷺が来てそっと寄り添った」か「白鷺が番と仲良さそうに飛んでいった」のどちらかの場面に視点を決めて歌いましょう。

 

なるべく「絵葉書一枚に描ける場面」の切り取りを心がけてみてください。絵葉書一枚に描ける場面というのは視点が動いていない切り取りが出来ているということです。そしてその一枚をしっかり見て具体的に描くようにしてください。

 

自分では一瞬のことだと思っていてもその一瞬の間に時間が経過して視点が変わっていることがあるのでよく注意してみましょう。

時間が経過していたら状態や状況が矛盾していないか確認しましょう。そして情報量が多すぎるな、一枚の絵では描けないなと思ったら、思い切ってどちらかの場面に決めましょう。

 

視点(カメラ)がどこにあるのか確定させることは大事です。カメラはどこにあって誰(何)を主役として映しているのか。読者に分かるようにはっきりさせましょう。

 

☆時間・視点が移っていないか確認!

☆場面が切り替わっていない?絵にしたら何枚?

☆誰(何)が主体かわかるように!

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by sozaijiten Image Book 5